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万葉集 現代語訳 巻十二相聞2884・2885・2886・2887・2888

正述心緒(ありのままに思いを述べた歌)⑤
2884 恋ひつつも今日(きょう)はあらめど玉くしげ明けなむ明日(あす)をいかに暮らさむ
 ※枕詞:玉くしげ
 ※「あらめど」過ごすだろうが。
 ※「暮らす」日の暮れるまで時間を過ごす。

    焦がれながらも今日の日は
    なんとか過ごせるでしょうけど
    一夜明かした明くる日は
    夜までどうして過ごしましょう


2885 さ夜(よ)ふけて妹(いも)を思ひ出でしきたへの枕もそよに嘆きつるかも
 ※枕詞:しきたへの
 ※「そよ」風の吹く音、物の触れ合う音など、かすかな物音をあらわす擬声語。
 ※「嘆く」ため息をつく。悲しんで泣く。

    夜ふけになってあの人を
    思い出しては眠れずに
    寝返りうって溜め息を
    ついて枕をきしませる


2886 人言(ひとごと)はまこと言痛(こちた)くなりぬともそこに障(さわ)らむ我(われ)にあらなくに
 ※「言痛く」うるさく。わずらわしく。
 ※「障らむ」〈障る〉妨げられる。〈む〉婉曲。

    人の噂がほんとうに
    うるさくなってしまっても
    そんなことでへこたれる
    ような私じゃないのにね


2887 立ちて居てたどきも知らず我(あ)が心天(あま)つ空なり土(つち)は踏めども
 ※「たどき」〈たづき〉の転。手段・方法。

    立ってみても座っても
    どうしてよいかわからない
    私の心はうわの空
    足は地面を踏むけれど


2888 世の中の人の言葉と思ほすなまことそ恋ひし逢はぬ日を多み
 ※「思ほすな」〈思ほす〉は〈思ふ〉の尊敬語。〈な〉禁止。
 ※「恋ひし」〈し〉過去、〈そ〉の結びの連体形。
 ※「日を多み」日が多いので。

    世間の人が口にする
    いいかげんな言葉だと
    思わないで下さいね
    ほんとに焦がれていたのです
    逢えない日々が続くので



by sanukiyaichizo | 2019-02-16 00:00 | 万葉集巻十二 | Trackback | Comments(0)