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万葉集 現代語訳 巻十一相聞2753・2754・2755・2756・2757

寄物陳思(物に寄せて思いを述べた歌)27
2753 波の間ゆ見ゆる小島(こしま)の浜久木(はまひさぎ)久しくなりぬ君に逢はずして
 ※「波の間ゆ~浜久木」〈久しく〉を導く序詞。
 ※「浜久木」浜辺に生えているヒサギ。〈ヒサギ〉はキササゲの古名。アカメガシワの古名ともいう。

    〈波の間に見えている
    小島に生える浜ヒサギ〉
    ずいぶん久しくなりました
    あなたに逢わなくなってから


2754 朝柏(あさかしわ)潤八(うるや)川辺(かわへ)の篠(しの)の芽の偲(しの)ひて寝(ぬ)れば夢(いめ)に見えけり
 ※枕詞:朝柏
 ※「朝柏~篠の芽の」〈偲ひて〉を導く序詞。
 ※「潤八川」未詳。静岡県富士宮市と富士市を流れる潤井川ではないかとする説がある。
 ※「偲ひて」恋い慕って。

    〈潤八川の川岸に
    芽を出す篠の〉恋い慕い
    眠れば私の夢の中
    あなたが姿をあらわした

2755 浅茅原(あさじはら)刈(か)り標(しめ)さして空言(むなこと)も寄そりし君が言(こと)をし待たむ
 ※「浅茅原刈り標さして」〈空事(むなこと=あてにならないこと)〉を起こし〈空言〉を導く序詞。
 ※「刈り標」〈ここの茅萱(ちがや)は勝手に刈るな〉という占有のしるし。
 ※「空言」実(じつ)のないことば。
 ※「寄そりし」関係があると噂された。

    〈浅茅の原に刈り標を
    挿すほど〉空しい噂でも
    私と取り沙汰されていた
    あなたのお言葉待ちましょう


2756 月草の借れる命(いのち)にある人をいかに知りてか後(のち)も逢はむと言ふ
 ※枕詞:月草の
 ※「いかに知りてか」反語。わかるはずがない。
 ※「後も」(今でなくても)後にでも。

    人の命はこの世では
    借りものだから 後にでも
    逢おうというけど 将来の
    ことなどわかるものですか


2757 大君の御笠(みかさ)に縫へる有間菅(ありますげ)ありつつ見れど事なき我妹(わぎも)
 ※「大君の~有間菅」〈あり〉を導く序詞。
 ※「ありつつ見れど」〈つつ〉継続。見続けているが。
 ※「事なき」格別である。すばらしい。
 
    〈帝の笠を編むときに
    用いるみごとな有間菅〉
    いつもあなたを見ているが
    なんて素敵な妻だろう



by sanukiyaichizo | 2019-01-17 00:00 | 万葉集巻十一 | Trackback | Comments(0)