2018年 08月 17日
万葉集 現代語訳 巻十雑歌1951・1952・1953・1954・1955
1951 うれたきや醜(しこ)ほととぎす今こそば声の嗄(か)るがに来鳴きとよめめ
※「うれたきや」〈うれたし〉しゃくにさわる。腹立たしい。〈や〉間投助詞。
※「醜」ののしりの気持ちをこめた言葉。
※「今こそ~とよめめ」〈こそ~め〉~てほしい。
※「がに」するほどに。
ああ憎らしい大バカの
ホトトギスめ 今こそは
声の嗄れてしまうほど
来て鳴き声を響かせろ
1952 今夜(こよい)のおほつかなきにほととぎす鳴くなる声の音(おと)の遥(はる)けさ
今夜は空がぼんやりと
霞んで見渡せないけれど
ホトトギスの鳴いている
声がはるかに聞こえるよ
1953 五月山(さつきやま)卯(う)の花月夜(はなづくよ)ほととぎす聞けども飽(あ)かずまた鳴かぬかも
※「五月山」五月の山。
※「卯の花月夜」卯の花の咲いている月夜。
※「鳴かぬかも」〈ぬか〉願望。
月夜に卯の花咲いている
五月の山のホトトギス
聞いても飽きることはない
もっと鳴いてほしいなあ
1954 ほととぎす来(き)居(い)も鳴かぬか我(わ)がやどの花橘の地(つち)に落ちむ見む
※「来居」来て止まって。
※「も~ぬか」願望。
※「やど」家の敷地。庭先。
※「花橘」橘の花。
ホトトギスよ 枝に来て
そこに止まって鳴いてくれ
わが家の庭の橘の
花が散るのを見ていたい
1955 ほととぎす厭(いと)ふ時なしあやめぐさ縵(かづら)にせむ日こゆ鳴き渡れ
※「あやめぐさ」ショウブ。アヤメ科の花菖蒲ではない。邪気を払うとされた。
※「縵」つる草や草木の枝・花などを巻きつけて髪飾りとしたもの。
※「縵にせむ日」五月五日にアヤメグサを縵にする習俗があった。
※「こゆ」ここを通って。ここから。
ホトトギスの鳴く声は
いつ聞いてもよいけれど
ショウブを髪に飾る日は
ここを鳴いて飛んで行け