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万葉集 現代語訳 巻十雑歌1951・1952・1953・1954・1955

鳥を詠む④
1951 うれたきや醜(しこ)ほととぎす今こそば声の嗄(か)るがに来鳴きとよめめ
 ※「うれたきや」〈うれたし〉しゃくにさわる。腹立たしい。〈や〉間投助詞。
 ※「醜」ののしりの気持ちをこめた言葉。
 ※「今こそ~とよめめ」〈こそ~め〉~てほしい。
 ※「がに」するほどに。

    ああ憎らしい大バカの
    ホトトギスめ 今こそは
    声の嗄れてしまうほど
    来て鳴き声を響かせろ

1952 今夜(こよい)のおほつかなきにほととぎす鳴くなる声の音(おと)の遥(はる)けさ

    今夜は空がぼんやりと
    霞んで見渡せないけれど
    ホトトギスの鳴いている
    声がはるかに聞こえるよ


1953 五月山(さつきやま)卯(う)の花月夜(はなづくよ)ほととぎす聞けども飽(あ)かずまた鳴かぬかも
 ※「五月山」五月の山。
 ※「卯の花月夜」卯の花の咲いている月夜。
 ※「鳴かぬかも」〈ぬか〉願望。

    月夜に卯の花咲いている
    五月の山のホトトギス
    聞いても飽きることはない
    もっと鳴いてほしいなあ

1954 ほととぎす来(き)居(い)も鳴かぬか我(わ)がやどの花橘の地(つち)に落ちむ見む
 ※「来居」来て止まって。
 ※「も~ぬか」願望。
 ※「やど」家の敷地。庭先。
 ※「花橘」橘の花。

    ホトトギスよ 枝に来て
    そこに止まって鳴いてくれ
    わが家の庭の橘の
    花が散るのを見ていたい


1955 ほととぎす厭(いと)ふ時なしあやめぐさ縵(かづら)にせむ日こゆ鳴き渡れ
 ※「あやめぐさ」ショウブ。アヤメ科の花菖蒲ではない。邪気を払うとされた。
 ※「縵」つる草や草木の枝・花などを巻きつけて髪飾りとしたもの。
 ※「縵にせむ日」五月五日にアヤメグサを縵にする習俗があった。
 ※「こゆ」ここを通って。ここから。

    ホトトギスの鳴く声は
    いつ聞いてもよいけれど
    ショウブを髪に飾る日は
    ここを鳴いて飛んで行け



by sanukiyaichizo | 2018-08-17 00:00 | 万葉集巻十 | Trackback | Comments(0)