2017年 12月 18日
万葉集 現代語訳 巻六雑歌969・970
969 しましくも行きて見てしか神奈備(かむなび)の淵は浅(あ)せにて瀬にかなるらむ
※「しましくも」ちょっとの間も。
※「てしか」願望。
※「神奈備の淵」飛鳥川の雷丘(いかづちのおか)付近の淵。〈かむなび〉は神の降りて来る、また
は、神の鎮座する山や森(明日香では川も)をいう。
ほんのわずかの間だけでも
訪ねて行って見てみたい
神奈備の深い淵が埋まって
浅瀬になっているかなあ
970 指進乃栗栖(くるす)の小野(おの)の萩(はぎ)の花散らむ時にし行きて手向(たむ)けむ
※「指進乃」読みも意味も未詳。枕詞であろうという。
※「栗栖」未詳。詞書によれば明日香付近の地名のようだ。
※「小野」野原。
※「手向く」(旅の安全などを祈って)神仏に幣帛・花・香などを供える。
栗栖の地の野に咲く萩が
盛りを過ぎて花散らす
そんな時分になったら訪ね
神にお供え捧げよう
※大伴旅人はすでに病床にあったようだ。この年七月に亡くなっている。