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万葉集 現代語訳 巻六雑歌969・970

天平三年(731年)、大納言大伴卿が奈良の家にあって故郷明日香を思った歌二首
969 しましくも行きて見てしか神奈備(かむなび)の淵は浅(あ)せにて瀬にかなるらむ
 ※「しましくも」ちょっとの間も。
 ※「てしか」願望。
 ※「神奈備の淵」飛鳥川の雷丘(いかづちのおか)付近の淵。〈かむなび〉は神の降りて来る、また
  は、神の鎮座する山や森(明日香では川も)をいう。

  ほんのわずかの間だけでも
  訪ねて行って見てみたい
  神奈備の深い淵が埋まって
  浅瀬になっているかなあ


970 指進乃栗栖(くるす)の小野(おの)の萩(はぎ)の花散らむ時にし行きて手向(たむ)けむ
 ※「指進乃」読みも意味も未詳。枕詞であろうという。
 ※「栗栖」未詳。詞書によれば明日香付近の地名のようだ。
 ※「小野」野原。
 ※「手向く」(旅の安全などを祈って)神仏に幣帛・花・香などを供える。

  栗栖の地の野に咲く萩が
  盛りを過ぎて花散らす
  そんな時分になったら訪ね
  神にお供え捧げよう


 ※大伴旅人はすでに病床にあったようだ。この年七月に亡くなっている。


by sanukiyaichizo | 2017-12-18 00:00 | 万葉集巻六 | Trackback | Comments(0)