2017年 12月 13日
万葉集 現代語訳 巻六雑歌955・956・957・958・959
955 さす竹の大宮人(おおみやひと)の家と住む佐保(さほ)の山をば思ふやも君
※枕詞:さす竹の
※「君」大伴旅人をさす。
奈良の都の大宮人が
家と定めてお暮しに
なっておられる佐保の山を
恋しく思われるでしょうか
大宰帥(だざいのそち)大伴卿が答えた歌
956 やすみしし我(わ)が大君(おおきみ)の食(お)す国は大和(やまと)もここも同じとそ思ふ
※枕詞:やすみしし
※「食す国」お治めになる国。
私たちの天皇陛下が
お治めになっている国は
大和の国もこの大宰府も
変わりはないと思います
冬十一月、大宰府の官人たちが香椎(かしい)の宮に参拝し、終わって大宰府に帰るときに、馬を香椎(かしい)の浦にとめ、それぞれ思いを述べて作った歌
帥の大伴卿の歌
957 いざ子ども香椎(かしい)の潟に白たへの袖さへ濡れて朝菜摘みてむ
※枕詞:白たへの
※「子ども」目下の者に親しんで呼びかける語。
※「菜」食用の草本類の総称。
さあ皆の者 香椎の干潟に
下りて袖まで濡らしても
気にすることなく朝の食事の
海藻採って楽しもう
大弐小野老朝臣(だいにおののおゆあそみ)の歌
958 時つ風吹くべくなりぬ香椎潟(かしいがた)潮干の浦に玉藻(たまも)刈りてな
※「時つ風」潮がさしてくるときに吹く風。
※「刈りてな」〈て〉完了・未然形。〈な〉勧誘。
潮が満ちてくるときに吹く
風が今にも吹きそうだ
香椎潟の潮干の浦で
美しい藻を刈りましょう
豊前守宇努首男人(ぶぜんのかみうののおびとおひと)の歌
959 行き帰り常に我(わ)が見し香椎潟(かしいがた)明日(あす)ゆ後(のち)には見むよしもなし
※「ゆ」から。
行きと帰りに私がいつも
見ていた香椎の潟なのに
明日からのちはもう見ることが
できなくなってしまうのだ