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万葉集 現代語訳 巻六雑歌955・956・957・958・959

大宰少弐(だざいのしょうに)石川朝臣足人(いしかわのあそみたるひと)の歌
955 さす竹の大宮人(おおみやひと)の家と住む佐保(さほ)の山をば思ふやも君
 ※枕詞:さす竹の
 ※「君」大伴旅人をさす。

  奈良の都の大宮人が
  家と定めてお暮しに
  なっておられる佐保の山を
  恋しく思われるでしょうか


大宰帥(だざいのそち)大伴卿が答えた歌
956 やすみしし我(わ)が大君(おおきみ)の食(お)す国は大和(やまと)もここも同じとそ思ふ
 ※枕詞:やすみしし
 ※「食す国」お治めになる国。

  私たちの天皇陛下が
  お治めになっている国は
  大和の国もこの大宰府も
  変わりはないと思います


冬十一月、大宰府の官人たちが香椎(かしい)の宮に参拝し、終わって大宰府に帰るときに、馬を香椎(かしい)の浦にとめ、それぞれ思いを述べて作った歌
帥の大伴卿の歌
957 いざ子ども香椎(かしい)の潟に白たへの袖さへ濡れて朝菜摘みてむ
 ※枕詞:白たへの
 ※「子ども」目下の者に親しんで呼びかける語。
 ※「菜」食用の草本類の総称。

  さあ皆の者 香椎の干潟に
  下りて袖まで濡らしても
  気にすることなく朝の食事の
  海藻採って楽しもう


大弐小野老朝臣(だいにおののおゆあそみ)の歌
958 時つ風吹くべくなりぬ香椎潟(かしいがた)潮干の浦に玉藻(たまも)刈りてな
 ※「時つ風」潮がさしてくるときに吹く風。
 ※「刈りてな」〈て〉完了・未然形。〈な〉勧誘。

  潮が満ちてくるときに吹く
  風が今にも吹きそうだ
  香椎潟の潮干の浦で
  美しい藻を刈りましょう


豊前守宇努首男人(ぶぜんのかみうののおびとおひと)の歌
959 行き帰り常に我(わ)が見し香椎潟(かしいがた)明日(あす)ゆ後(のち)には見むよしもなし
 ※「ゆ」から。

  行きと帰りに私がいつも
  見ていた香椎の潟なのに
  明日からのちはもう見ることが
  できなくなってしまうのだ



by sanukiyaichizo | 2017-12-13 00:00 | 万葉集巻六 | Trackback | Comments(0)