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万葉集 現代語訳 巻七雑歌1099・1100・1101・1102

岳(おか)を詠む
1099 片岡のこの向(むこ)つ峰(お)に椎(しい)蒔かば今年の夏の陰にならむか
 ※「片岡」奈良県北葛城郡王寺町付近の地名かという。

    この片岡の真向かいの
    峰に椎の実を蒔けば
    今年の夏はこの岡も
    日陰になるであろうかな


河を詠む①
1100 巻向(まきむく)の痛足(あなし)の川ゆ行く水の絶ゆることなくまたかへり見む
 ※「痛足の川」巻向川の穴師付近での名。

    巻向にある痛足(あなし)の川を
    水が流れて行くように
    絶えることなく繰り返し
    この地に帰って来て見よう


1101 ぬばたまの夜(よる)さり来れば巻向(まきむく)の川音(かわおと)高しもあらしかも疾(と)き
 ※枕詞:ぬばたまの
 ※「あらしかも疾き」〈あらし〉山から吹き下ろす強い風。〈かも〉疑問。〈疾き〉連体形、激し
  い。

    夜になると巻向の
    川の瀬音がよく響く
    山からおろして来る風が
    激しいからであろうかな


原注
この二首は、柿本朝臣人麻呂の歌集に出ている。

1102 大君(おおきみ)の三笠の山の帯(おび)にせる細谷川(ほそたにがわ)の音のさやけさ
 ※枕詞:大君の
 ※「三笠の山」奈良市春日大社後方の山。

    三笠の山の山すそを
    まるで帯のようにして
    めぐる細い谷川の
    瀬音のすがすがしいことよ



by sanukiyaichizo | 2018-01-24 00:00 | 万葉集巻七 | Trackback | Comments(0)