2018年 01月 24日
万葉集 現代語訳 巻七雑歌1099・1100・1101・1102
1099 片岡のこの向(むこ)つ峰(お)に椎(しい)蒔かば今年の夏の陰にならむか
※「片岡」奈良県北葛城郡王寺町付近の地名かという。
この片岡の真向かいの
峰に椎の実を蒔けば
今年の夏はこの岡も
日陰になるであろうかな
河を詠む①
1100 巻向(まきむく)の痛足(あなし)の川ゆ行く水の絶ゆることなくまたかへり見む
※「痛足の川」巻向川の穴師付近での名。
巻向にある痛足(あなし)の川を
水が流れて行くように
絶えることなく繰り返し
この地に帰って来て見よう
1101 ぬばたまの夜(よる)さり来れば巻向(まきむく)の川音(かわおと)高しもあらしかも疾(と)き
※枕詞:ぬばたまの
※「あらしかも疾き」〈あらし〉山から吹き下ろす強い風。〈かも〉疑問。〈疾き〉連体形、激し
い。
夜になると巻向の
川の瀬音がよく響く
山からおろして来る風が
激しいからであろうかな
原注
この二首は、柿本朝臣人麻呂の歌集に出ている。
1102 大君(おおきみ)の三笠の山の帯(おび)にせる細谷川(ほそたにがわ)の音のさやけさ
※枕詞:大君の
※「三笠の山」奈良市春日大社後方の山。
三笠の山の山すそを
まるで帯のようにして
めぐる細い谷川の
瀬音のすがすがしいことよ