2018年 01月 19日
万葉集 現代語訳 巻七雑歌1077・1078・1079・1080・1081
1077 ぬばたまの夜(よ)渡る月を留めむに西の山辺(やまへ)に関もあらぬかも
※枕詞:ぬばたまの
※「ぬかも」願望。ないかなあ。あってほしい。
夜空を渡って行く月を
空にとどめておくために
西の山辺に関所でも
あってくれるといいがなあ
1078 この月のここに来(き)たれば今とかも妹(いも)が出(い)で立ち待ちつつあるらむ
※「かも」疑問。
この月齢の月がこの
位置に来たということは
もう来るころと外に立ち
あなたは待っているかしら
※〈この月〉とは月齢のことをさす。〈今〉は、たとえば〈十六夜の月が今そこに見える一本松の真
上に昇って来たから、あの人の来る時刻だ〉というような〈妹〉の思い。
1079 まそ鏡照るべき月を白たへの雲か隠せる天(あま)つ霧かも
※枕詞:まそ鏡
明るく照らしているはずの
月を隠しているものは
白布のような雲なのか
それとも空の霧なのか
1080 ひさかたの天(あま)照る月は神代にか出(い)でかへるらむ年は経につつ
※枕詞:ひさかたの
※「つつ」詠嘆、または逆接。
空に輝いている月は
神代の昔に戻っては
また出直して来るのかな
ずいぶん年は経たけれど
※昔から変わらぬ月の不思議を歌にした。
1081 ぬばたまの夜(よ)渡る月をおもしろみ我(わ)が居(お)る袖に露そ置きにける
※枕詞:ぬばたまの
※「月をおもしろみ」月が趣深いので。
※「置きにける」〈に〉完了。〈ける〉詠嘆。
夜空を渡って行く月が
美しいので寝られない
私の着物の袖の上
露が置いてしまったよ