2017年 09月 21日
万葉集 現代語訳 巻四相聞700・701・702・703・704
700 かくしてやなほや退(まか)らむ近からぬ道の間(あいだ)をなづみ参来(まいき)て
※「なほ」それでもやはり。元のとおり。
※「なづみ」苦労して。
こんなふうにやはりむなしく
帰って行かねばならないか
あまり近くもない道のりを
苦労しながらやって来て
河内百枝娘子(こうちのももえおとめ)が大伴宿祢家持に贈った歌二首
701 はつはつに人を相見ていかにあらむいづれの日にかまた外(よそ)に見む
※「はつはつに」ほんのちょっと。
ちょっとお逢いしたことのある
あなたはどうしておられます
遠くからでもいつの日かまた
お目にかかれましょうかしら
702 ぬばたまのその夜(よ)の月夜(つくよ)今日(きょう)までにわれは忘れず間(ま)なくし思(おも)へば
※枕詞:ぬばたまの
※「月夜」月。
※「間なく」絶え間なく。
あの夜に見たの月を今日まで
私は忘れておりません
絶え間もなしにあなたのことを
お慕い申していますので
巫部麻蘇娘子(かむなぎべのまそおとめ)の歌二首
703 わが背子(せこ)を相見しその日今日(きょう)までにわが衣手(ころもで)は乾(ふ)る時もなし
あなたとお逢いしたその日から
今日までずっとわたくしの
着物の袖は涙に濡れて
乾くひまもありません
704 たく繩(なわ)の長き命を欲(ほ)りしくは絶えずて人を見まく欲りこそ
※枕詞:たく繩の
※「見まく欲りこそ」逢いたいと願う。〈こそ〉強意。〈あれ〉などが省略されている。
長く生きていられる命を
私が欲しいと思うのは
絶えずあなたに逢っていたいと
願うからこそなのですよ